先日、私どもデイケアのご利用者様が、利用中だった小型の車いすから標準サイズの車いすへ変更されました。
結果、これまで姿勢崩れがひどくまともに座っていることも困難だった状況から、ある程度の時間であれば姿勢も安定し、食事も以前よりスムーズに摂れるように変化しました。
この記事では、身体に合わない車いすを使う事での影響についてご紹介しています。
車いすってそもそも何?
皆さんの持つ車いすの一般的なイメージとしては、歩くことが困難な方が座って移動する乗り物、でしょうか。
以前は身体障がい者の制度を利用して取得することが多く、身体機能や体格に合わせて製作・交付(後に費用支給へ)されていました。
その後に公的介護保険制度が開始されて以降は、介護保険を利用してのレンタルが主流となっています。
レンタルという性質上、当初は一人ひとりに合わせた車いすを用意することは難しく、また身体障がい者だけでなく高齢者にも利用者層は広がったため、標準的なものの提供から始まり車いすユーザーも増えていきました。
なぜ身体に合わない車いすを使っているのか
例えば眼鏡を購入する際、視力や装着感、顔に似合うかなどのデザイン性を確認せずに選ぶ方はいるでしょうか。
例えば靴を購入する際、サイズや履き心地・歩き心地を確認せずに選ぶ方はいるでしょうか。
1日の中で長い時間を車いすと共に過ごすということは、眼鏡と同様に「身体への負担少なく自分の能力や用途に合っているか」という視点が必要なことです。
しかしながら現実には身体に合っていないと思われるような車いす利用者は存在します。
ではなぜそのように車いすに関しては事情が違ってくるのでしょうか。
それにはこんな事情が考えられます。
- 住環境に合わせることを優先したから
- 介護をする家族の事情で選んでいたから
- 対象者にとっても、初めて使うものなので「こういうもの」と思っていたから
- 身体状況が変わっても適正な見直しを行っていないから
- 適切な助言が受けられなかったから など
好んで使い勝手の悪いものを導入する訳はなく、何らかの優先すべきことや仕方ない事情があったものと思われます。
もちろん身体状況に適合した車いすユーザーは多く、明らかに合っていないという方はごく一部の方と思われます。
合わない車いすによる姿勢崩れと二次障害
ではなぜ身体状況に合っていない車いすを使うことが良くないのか。
単純に座っていて苦痛ということがあります。
皆さんは座り心地の悪い椅子に座って長い時間を過ごすことができるでしょうか。
車の座席や映画館の椅子ですら2時間でも苦痛です。
これ以上に座り心地が悪い椅子に半日、1日と座っていられるでしょうか。
健常者であれば座り直しや立ち上がってお尻の痛みを減らしたり、ストレッチをして身体への負担を軽くすることもできるでしょう。
しかしながらそれが出来ない身体状況の方にとっては、苦痛が身体への負担として大きく影響を及ぼします。
痛くても座り直しができず褥創を作るかもしれません。
無理に身体を車いすに合わせ続けたことで変形を起こす方がいるかもしれません。
うまく操作ができず、出来ていたことが出来なくなるかもしれません。
そしてこれらの状況が続き、様々なことに無気力になるかもしれません・・・。
まとめ
福祉先進国の北欧では「環境が人に合わせる」という考え方が主流だそうです。
日本に同じ考え方を当てはめることは非常に難しく、日本家屋の構造をとっても「人が環境に合わせる」としなければならない場合も存在します。
すべてにおいて利用者目線ということは極論であり現実的ではないと思われますが、不都合を感じている利用者の中には間違いなく改善できる方も存在します。
使う方のADL、QOLを落とさない、または向上させるためにも、もし身近でつらそうに車いすに座っている方がいたら、本当に身体に合った車いすなんだろうかと疑問を持ってみてください。
もしかしたらそれが思わぬ状態改善につながるきっかけになるかもしれません。
その場合はその方を担当しているケアマネジャーや福祉用具事業者へ相談していただければ、専門的な視点で見直し・解決策を提案して下さると思います。
磯村医院通所リハビリテーション
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