高齢者の転倒予防|PT・OTが教えるバランス運動

高齢者の転倒予防|PT・OTが教えるバランス運動|磯村医院

この記事は磯村医院の理学療法士・作業療法士の監修のもとに作成されています。医療情報は定期的に見直しています。

「最近、足がもつれる気がする」「段差でつまずいた」——そんな経験はありませんか?

高齢者の転倒は、骨折・入院・そのまま寝たきりへとつながるリスクがある深刻な問題です。しかし、正しいバランス運動を続けることで転倒リスクは大幅に下げられます。

この記事では、磯村医院のPT(理学療法士)・OT(作業療法士)が実際にリハビリで使っているバランス運動を、自宅でできる形にまとめました。ぜひ毎日の習慣に加えてください。

なぜ転倒が怖いのか?

転倒に関する重要な数字

  • 65歳以上の約3人に1人が年1回以上転倒(厚生労働省)
  • 転倒による骨折(特に大腿骨頸部骨折)後、1年以内に約20〜30%が歩行機能を失う
  • 骨折後の入院・手術が介護状態への入口になるケースが多い

「転ばないように気をつける」だけでは不十分です。バランス力・筋力・反応速度を日頃から鍛えることが、本当の意味での転倒予防になります。

転倒リスク セルフチェック

以下の項目に3つ以上当てはまる方は、転倒リスクが高い可能性があります。

チェック項目 はい
過去1年間に転んだことがある
歩くときに足が上がりにくいと感じる
段差や夜間のトイレで不安を感じる
片脚で3秒以上バランスを保てない
椅子から手をつかずに立ち上がれない
最近、外出の機会が減った
複数の薬を服用している(睡眠薬・降圧剤など)

3つ以上当てはまった方:バランス運動を日課に取り入れることをおすすめします。当てはまらない方も、予防のために習慣化がおすすめです。

バランス力はなぜ低下するのか?

バランス機能は、①感覚(視覚・固有感覚・前庭)②筋力③反応速度の3つの連携で成り立っています。加齢とともにこれらが低下すると、わずかな体の揺れに対処できず転倒しやすくなります。

低下する機能 転倒への影響 対策
下肢筋力 踏ん張れない・つまずきやすい 筋力トレーニング
固有感覚 足の位置を正確に感知できない バランス訓練
反応速度 崩れかけても間に合わない 協調性・敏捷性の訓練
視力・前庭機能 暗所・方向転換で不安定になる 環境整備+眼科受診

PT・OTが教えるバランス運動5選

高齢者の転倒予防|PT・OTが教えるバランス運動|磯村医院

いずれも椅子や壁など手すり代わりになるものを使いながら安全に行えます。痛みや強いめまいが出た場合はすぐに中止してください。

高齢者が理学療法士と一緒にバランス運動をしているイラスト

① 片足立ち(バランス力の基礎)

最もシンプルなバランス訓練。片足で立つだけで、足首・膝・股関節のバランス筋が同時に働きます。

やり方

  1. 椅子の背もたれや壁に軽く手を添える
  2. 片方の足を少し浮かせ、片脚立ちになる
  3. 10〜30秒キープ → 反対の足へ
  4. 左右各3回を目安に行う

⚠️ 慣れてきたら手を添えずに行うと効果が高まります。目を閉じると難易度アップ(上級者向け)。

② かかと上げ(ふくらはぎ・足首の強化)

足首を持ち上げる動作は、つまずいた瞬間に「踏ん張る力」を生み出します。転倒の多くはこの踏ん張りが間に合わないことで起きます。

やり方

  1. 椅子の背もたれに軽く手を添えて立つ
  2. 両かかとをゆっくり上げ(つま先立ち)、2秒キープ
  3. ゆっくり下ろす(ここが大切!下ろすときも筋肉を使う)
  4. 10〜15回 × 2セット

💡 朝と夕方の2回行うと、1日合計300〜400回分の筋収縮になります。

③ 足踏み運動(協調性・下肢の協調制御)

足を交互に上げる「足踏み」は、体重移動のタイミングと協調性を高め、歩行中のつまずき予防に直結します。

やり方

  1. 椅子に座るか、壁に手を添えて立つ
  2. 左右の足を交互に、床から10cm程度持ち上げる(膝を高く上げすぎない)
  3. 1分間続ける × 2〜3セット

💡 「1・2・1・2」とリズムを声に出すと協調性が上がります。

高齢者の転倒予防|PT・OTが教えるバランス運動|磯村医院

④ 椅子スクワット(大腿四頭筋・臀筋の強化)

太ももとお尻の筋肉は「立ち上がる・踏みとどまる」力の源。椅子や壁を使えば膝への負担を抑えて安全に行えます。

やり方(椅子バージョン)

  1. 椅子に浅く座り、足を肩幅に開く
  2. 体を少し前傾させ、手を膝に添える
  3. ゆっくり立ち上がり(3秒かけて)、ゆっくり座る(3秒かけて)
  4. 10回 × 2〜3セット(休憩を挟む)

⚠️ 痛みが強くなる場合は中止し、整形外科やリハビリ専門職へ相談しましょう。

⑤ 座位での体幹トレーニング(姿勢・重心の安定)

体の中心(体幹)が安定していると、横から押されたときや段差でよろけたときに自然に立て直す力が働きます。

やり方

  1. 椅子に座り、背もたれに寄りかからない
  2. 背筋を伸ばし、お腹を軽く引き込む(へそを背骨に近づけるイメージ)
  3. この姿勢のまま、片方の腕をゆっくり前方へ伸ばす(3秒)→ 戻す
  4. 左右交互に10回 × 2セット

💡 テレビを見ながらでも行えます。「ながら体操」として習慣化するのがコツです。

どのくらいの頻度で行えばいい?

目標 頻度 期待できる効果
はじめる 週3回〜毎日 約4週間でバランス感覚の変化を実感
維持する 毎日5〜10分 3〜6ヶ月で転倒率が約30〜40%低下(研究報告)
さらに効果を高める 週1〜2回の通所リハビリ 専門家のチェックで安全・確実に続けられる

「続けること」が最大の転倒予防。一度やめると2〜4週間で効果が落ち始めます。テレビのCM中に行うなど、生活に組み込む工夫をしましょう。

運動と合わせて:自宅の転倒リスクを減らすポイント

どんなに体を鍛えても、環境の危険を放置していると転倒を防げません。OT(作業療法士)が重視する住環境チェックも確認しましょう。

  • 廊下・トイレ・風呂場に手すりを設置する(介護保険で費用補助あり)
  • 玄関・リビングの段差にスロープや補助具を使う
  • 夜間の移動ルートにセンサーライトを設置する
  • 床の滑り止めマット・敷物のめくれを確認する
  • 電気コードや荷物などつまずきの原因を通路から除く
  • 滑りにくい室内履き(スリッパより靴型)を使用する

よくある質問

Q. 膝や腰が痛くてもバランス運動はできますか?

A. 多くの場合、痛みの状態に合わせた運動を選ぶことで可能です。特に「座位でのかかと上げ」「足踏み(椅子座位)」「体幹トレーニング」は痛みが強い方でも取り組みやすい運動です。ただし、痛みが強くなる場合は専門家にご相談ください。

Q. 何歳からでも効果はありますか?

A. はい、80〜90代の高齢者でも筋力・バランス力は改善します。「もう年だから」と諦める必要はありません。開始時期が遅くなるほど、回復に時間がかかりますので、早めに始めることをおすすめします。

Q. 転倒後に骨折した場合、リハビリはいつから始められますか?

A. 骨折の種類・治療法によりますが、手術翌日〜数日以内に離床・リハビリを開始するのが現在の標準的な流れです。詳しくは骨折後のリハビリはいつから始める?の記事もご参照ください。

Q. 一人暮らしで転倒が心配です。どうすればいいですか?

A. 転倒予防のバランス運動と住環境の整備を組み合わせることが基本です。また、磯村医院の通所リハビリ(デイケア)では、専門スタッフが週1〜2回の転倒予防プログラムを提供しています。一人での運動継続に不安がある方にも適しています。
※介護保険サービス等の利用には、要介護認定などが必要となります。

磯村医院の転倒予防リハビリについて

磯村医院では、PT(理学療法士)・OT(作業療法士)が連携して個別の転倒予防プログラムを提供しています。

「自宅での運動が続かない」「専門家に体の状態を見てほしい」という方には、通所リハビリ(デイケア)もご利用いただけます。週1〜2回の通所で、安全・確実にバランス機能の改善を図ります。

また、2026年6月6日より整形外科診療を開始します。転倒後の骨折・痛みへの対応も、院内で一貫してサポートします。

整形外科 診療日:第1・第3・第5 土曜日 午前(9:00〜12:00)

まとめ

  • 高齢者の転倒は3人に1人が経験し、骨折・寝たきりに直結するリスクがある
  • バランス力は筋力・感覚・反応速度の3つの連携。加齢とともに低下するが、鍛えられる
  • PT・OTが推奨するバランス運動5選:片脚立ち・かかと上げ・足踏み・壁スクワット・座位体幹トレーニング
  • 週3回〜毎日、5〜10分続けることで4週間で効果を実感、6ヶ月で転倒率30〜40%低下
  • 運動と合わせて住環境の整備も転倒予防に欠かせない

「転ばない体」は、毎日の積み重ねでつくられます。今日から始めましょう。

監修:磯村医院 リハビリ科(PT・OT)|公開日:2026年5月14日

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リハビリ

この記事は、リハビリ職員(理学療法士、作業療法士)が書いています。私たちセラピストは、利用者様、患者様のニーズを把握した上で目標を設定し、その目標を達成できるようサポートしております。 医療保険内、介護保険内のリハビリテーションに携わりながら、それぞれのリハビリテーションの違いを理解した上で、医療と介護の連携を図っています。

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